朝日新聞社【みらのび】に取材されました

 

苦手に寄り添い、納得できるまで指導

教材の一部。幼児の場合、具体物を使い目に見えやすい形で教える。タブレットなどでフラッシュ暗算の練習も

東京・大田区の「森田そろばん教室」は、1959年に開講した歴史ある珠算塾。地域に密着しており、親子2代で通う生徒も多いそうです。代表の森田香奈先生は、先代を務めた義父がいったん閉じた教室を受け継ぎ、2019年に再び開きました。

そろばん学習以外に、そろばん式暗算力を身につけることに注力しており、パソコンやタブレットを使ってフラッシュ暗算の練習をします。

対象は、4歳からが目安。クラスは、幼児が1部(定員15人程度)、小学生以降は2、3部(各25人程度)が基本。週1~3回まで通うことができます。曜日や時間は、生徒の状況に応じて、変更の対応が可能です。1コマは、1部が50分、2部以降が55分。どのクラスも、異年齢が一緒に学ぶスタイル。「お兄さん、お姉さんの姿を見て、早く上達したいという子どもが多いです」と森田先生。

今回は、1部の稽古にお邪魔しました。かけ算、わり算、見取り算の練習問題を生徒たちがそれぞれ5分間で解いていました。そろばんの珠を頭の中でイメージし、指をすばやく動かしていきます。

教室の方針は、先生たちが個別に指導し、生徒一人ひとりの「苦手」に寄り添い、納得できるまで指導すること。幼児の場合、数字に慣れ親しむ気持ちを持ってもらうため、具体物を使い、目に見えやすい形で教えます。

分からないポイントを見逃さない

稽古では、個別指導をします。森田先生は細かく目を配り、声をかけます

教室は、全国珠算教育連盟の認定教場。生徒は、2カ月に1回、珠算や暗算の検定試験を受け、合格すると、次の級や段の学習に進みます。
テキストは、初心者向けが「ぱちぱちランド」シリーズ、その後は、全珠連準拠の問題集を使用します。幼児から九九の練習もします。

暗算学習では、珠算情報誌「サンライズ」が主催する通信競技大会「アバカスサーキット」の問題も採り入れています。珠算8級以上の生徒は、月1回開かれる塾内テストに参加します。

「幼児のお子さんは、分からない、という顔をする。そのポイントを見逃さない」と森田先生。指導では、細かく目を配ります。位の繰り上がりがある足し算などでは、珠の動かし方を説明したり、暗算の答え合わせでは「惜しいところを見つけたら、そろばんで確認するのが大事だよ」と声をかけたり。「珠は持たずに、指でピンと弾く」など、些細な部分も的確です。
また、そろばん学習で得られた数への自信が、文章題でつまずかないように、別コースで「速読解」も展開しています。

教室には、自宅での映像学習と週1回、月2回の通学を合わせたコースも。動画では、森田先生がテキストに沿って説明し、生徒は無理なく進めることができます。

 

頭の中に珠を浮かべ、イメージ力を鍛える

暗算で練習問題を解く生徒。そろばん式暗算は、イメージ力を鍛え、創造力や発想力にもつながります

珠算の学習は、数字を見聞きし、記憶して、正確に指を運ぶことを繰り返して進めていきます。検定試験など、規定の問題数を時間内に解くことを通じて、集中力が養われます。

答えを間違うことも経験しますが、生徒たちは、粘り強く練習を積み重ねます。希望者は、フラッシュ暗算検定などにも挑戦。目標にチャレンジし、解答を導き出す喜びを味わえば、ものごとを最後までやり抜く力が身につくでしょう。

「そろばんを習っている子の特徴は、大きな桁の数字を見ても驚かないこと」と森田先生。小さいうちから数字になじみ、短時間で計算する経験は、ものごとを整理してとらえ、論理的に考える力を高めます。将来培っておきたい、データなどの分析力、判断力、プレゼンテーション力にも役立つといいます。

そろばん式暗算は、頭の中に珠を浮かべながら計算するため、右脳のはたらきの一つである「イメージ力」を鍛えるそう。数々のトレーニングによる刺激は、新しいものを生み出す創造力や発想力を育みます。

生徒の中には、桁の多い四則計算を、暗算で速く、正確にできる子どももいるそう。さまざまな成功体験は、学習意欲につながります。見学時には、フラッシュ暗算に挑戦した生徒が「もう一回やってみたい!」と自ら挑戦し続ける姿が見られました。

上達のコツは「学び合う友達がいること」

代表の森田香奈先生(中)、右から、上野昌代先生、石川こころ先生

森田先生は、2児の母。先代が教室を運営していた頃、3年ほど手伝った経験を持ちます。2代目としては、入試や生活で使えるそろばん式暗算に力を入れたい思いがあったそう。暗算力アップにつながるやり方を独自に研究し、効率的な運指を考えたことも。

森田先生自身は、子どもの時にそろばんを習っておらず、生徒たちの分からない気持ちが理解できるそう。テキストも生徒によって変えるなど、一人ひとりをしっかりサポートしています。
上達のコツは「学び合う友達がいること」。クラスの生徒たちについて、「周りが集中して取り組んでいると、自分も集中できるのがいいところ」と話します。
やりがいを感じるのは、生徒ができるようになったことを目の当たりにした時。保護者からは「算数の成績が上がった」「集中力がついた」などの声が聞かれます。

見学時は、森田先生と2人の教室卒業生が指導を担当していました。上野昌代先生は、現役の保育士として働き、石川こころ先生は、大学に通いながら、幼稚園でアルバイトをしているそうです。子どもと接する機会を多く持つ先生たちと一緒に、生徒たちはコツコツと学びを続けています。

親目線でここがうれしい!

ここがうれしい!

見学時は、あいにく雪混じりの天気でしたが、子どもたちは、教室に着くと、真剣に問題と向き合っていました。そろばんの問題を解いている子もいれば、暗算に取り組んでいる子も。先生たちは落ち着いて見守り、一人ひとりに優しい言葉かけをしていました。フラッシュ暗算は、リズムを打つように数字が瞬時に現れるので、楽しみながらさまざまな力が鍛えられますね。小さいうちから数字に触れられる環境の中で、たくさんの可能性を広げてあげたいな、と思う教室です。(小島泰代)

参考URL 

https://miranobi.asahi.com/school/7231